AI活用を成功に導くポイントとは!?
~失敗から学ぶ、企業におけるデータサイエンスメソッド~
アフターレポート
本セミナーでは、AIベンダーである「aiforce solutions」のCOOである高橋蔵人様をお招きし、ビジネス市場におけるAI活用の必要性、データ利活用の「成功要因」と「阻害要因」についてお話し頂きました。
また、AIをより効果的に活用するためには、AI活用前の現状分析および、さまざまなデータを収集してシームレスに連携させる必要があります。その解決手段として、可視化したデータでリアルタイムに状況が把握できるダッシュボード、そして、フロントエンド/バックエンドの両面からAI活用を支えるノーコードツールの活用法についてもデモを交えてご紹介されました。
開催概要
主催:SCSK株式会社
共催:株式会社aiforce solutions、ウイングアーク1st株式会社、アステリア株式会社
日時:2022年1月28日(金) 14:00~15:00
会場:オンラインセミナー
今、求められている「AI」とは?
初めにお話しを伺ったのは、ビジネスでしっかりとAI活用ができるという世の中を目指して創業されたという 株式会社 aiforce solutions のCOO 高橋氏。
DXの成功に欠かせない「AI」
株式会社 aiforce solutions
高橋氏
「皆さんは日々の業務で「AI」が必要であると感じていらっしゃいますか?」(高橋氏)
冒頭のこの問いかけに、高橋氏ははっきりと以下のように伝えてくれました。
「最近よくバズワードとして取り上げられるDXを成功に導くには、AIは欠かせないテクノロジーの一つだと断言できます。」(高橋氏)
「DXについてシンプルに言いますと、皆様の事業をデジタル活用によって、変革する、もしくは売上を向上させるというような成長性のある事業にしていくということです。将来ビジネスモデルが様々に変わっていく中、DXを達成するためにデジタル化が必須と言えるでしょう。しかし現在、RPA や IoT などの色々なテクノロジーがある中、「AI」を活用したデジタル化というのは手をつけられていない領域の一つです。」(高橋氏)
DX推進、企業の成長にはまだまだAIを使える領域が沢山残されていると高橋氏は語ります。
「まず、AIを手段の一つもしくは、皆さんが使える道具の一つして捉えてください。DXを成功させるために、AIを利用します。これからはデータ駆動型のビジネスにどんどん変わっていきます。例えば、溜ったデータをそのままにして活用してない現状がある。ですが、そこにAIというものがあれば、その溜まったデータから大事なもの、価値があるものを見つけ出してくれます。このデータを価値に転換するテクノロジーがAIなのです。」(高橋氏)
ではそのデータを価値に転換するテクノロジー「AI」とはどのようなものなのでしょうか。
「AIって何?」あなたの認識は?
「AIとはなんでしょう?」と質問された際に、皆さんどんな回答をするでしょうか?皆が皆、同じ回答になるでしょうか?
高橋氏はこの質問に同様の回答が得られないのが今のAIの現状だといいます。
「まずAIでできることというのを皆さんに捉えて頂きたい。そうするとAIというものが理解できると思います。」(高橋氏)
そういって見せて頂いたのは、将来できるかもしれないAIと今のAIの位置づけを示した図でした。※以下図参照
「幼いころからの刷り込みや潜在意識で、AIといえば人のような知能を持つロボットというようなイメージを思い浮かべるような人は多いのではないでしょうか。ただ現在の AI ではそこの領域にはおよびません。今のAIは特定型AIと呼ばれていて、まだまだ弱いAIです。何が特定なのかというと、人間の知能の特定の部分を置き換える部品としてAIというものを捉えて頂ければと思います。」(高橋氏)
作り方は簡単!?必要なのは材料と調理法
今のAIが特定型AIなのだということが分かりましたが、ではそれはどうやって作られるのでしょう?
「必要なデータという材料を集めて、それを機械学習という調理法で調理することで、そこからデータの特徴や規則性などのパターンを見つけ出し、AIのモデルが作られます。例えば、画像データを機械学習する事で画像を識別するAIモデルができますし、過去の実績の数値データを機械学習することで、需要予測ができるAIモデルができます。」(高橋氏)
こうしてできた「AI」=AIモデルが「部品」として各ビジネスの現場において利用できるようになるといいます。
今の『AI』で本当にできること
では今のAIでできることは一体何なのでしょう。
今のAIというのは、ほとんど機械学習で作られており、機械学習で何が出来るか分かれば、ビジネスのどんな所でAIを使えるのかが見えてくると高橋氏は言います。
「現在、ビジネスにおけるAIの活用のほとんどが『教師あり学習』です。『教師あり学習』とは、求めたい正解を含んだデータ(教師データ)を基に学習する方法で、できることは “予測” と “分類” の2つです。業務の中で何か分類したり、数値予測をしているようなことがあれば、データを準備して機械学習をすることで、モデル化すなわちデジタル化が可能になります。」
「 “予測” は判断と読み替えてもいいです。例えば営業でいえば、この案件は成約しそうだ、これは失注しそうだというような判断です。過去の営業実績を機械学習することで、案件を分類するモデルができます。入社1年目の新入社員が必要なデータを入力すれば、長年営業をやっている人間こそが判断できるような予測を立てることが可能になります。」(高橋氏)
この2つのできることを活かして、信用スコアや信用リスクの分類も可能だといいます。例えば5万件、10万件にも及ぶ、私的財産、知財の特許の維持に対する判断。こちらも過去にどのような対象を維持、または維持しなかったなど、データを機械学習で学習する事で、属人化することなく業務の質を上げ、実際、約70%もの業務削減を実現した例もあるといいます。
他にも、多く使われるのが販売予測、また経営判断の数値予測から工場内の電力使用量の予測、不動産の販売価格の予測、医者による疾病の分類まで様々なものに使われており、今の『AI』が、色々なビジネスシーンで活用できることがわかりました。
どこの部分を『AI』と呼ぶのか
『AI』の実態がわかってきた中で、さらにどこの部分を『AI』と呼ぶのかを明確にすることでさらに理解が深まるといいます。
「データを準備して学習することでできる予測モデルや分類モデル、これらのことを学習済みモデル=AIモデルと呼び、多くの場合ここを『AI』としています。『AI』に対して様々な解釈が広がる中で、この『データを機械学習で学習することでAIが作られる』ということを覚えておいていただければと思います。」(高橋氏)
この作られたAIモデル。作って終わりではなく、推論に活かすこと、すなわち業務の中で使うことによって初めて『AI』をビジネスで活用するということにつながるといいます。※以下 図参照
「予測したり分類したりするところがあれば、どこにでも『AI』が使えます。ここにしか使えないというものではありません」(高橋氏)
AIモデル構築に必要な “職人技”
AIモデルさえ作ることができれば、あとは使うだけ。
ですがこのAIモデル構築には、統計やプログラミングの知識、データに関する勘と経験、ドメイン知識等の職人技が要求され、通常はデータサイエンティストと呼ばれるプロにより手作業で数週間~数ヶ月、それに加え特注品となるため費用も数百万~数千万にも及ぶそうです。
「最近はノーコードとかローコードで作れるようなソフトウェアが数多く登場しています。これを自動で機械学習を行うことから AutoML (Auto Machine Learning)と呼ばれていたりもします。データさえあれば誰でも回せる状態ですので、モデルを作り放題作れます。」(高橋氏)
ですがAutoMLに関しては、操作が難しい、精度が悪い、などの誤解も多く生じており、AIはまだ使えないという判断をされてしまうことも多いそうです。
これに対し、高橋氏はしっかりとしたソフトウェアを選択することで、こういった誤解を払拭できるのだと言い、実際の事例を交えてお話を伺えました。
AI 活用の 成功要因 と 阻害要因
業務を解決する手段としてのAI
最初にアパレルのブランド展開されている企業様の事例が紹介されました。
「コロナ禍でECも堅調という中でしたが、なかなかボラティリティが高く市場が読みにくいという課題がありました。そこで物流管理部門におけるECの出荷予測を行うAIモデルを構築し、約30億円の在庫削減を実現することができました。彼らはデータサイエンティストを入れてこれを実現したのではなく、AutoMLのソフトウェアを活用し、自らの手でデータを機械学習にかけ、AIモデルを作り、それを運用することで、均一化、業務の高度化及び効率化を実現したのです。」(高橋氏)
高橋氏は続けて、ある企業様の経理部門で財務・非財務情報をマネジメントデータとして 経営管理に取り入れ、見通し業務に活用し、大幅なビジネス環境の改善に役立てた事例を紹介し、こう続けました。
「大事なのは、AIを業務課題の解決手段として捉えていただくことです。そして自らどこで使ったらいいのか、どういうところで使えそうかということをしっかり理解して頂いて、現場主導で進めていく。失敗例としてよく見られるのが、AIの導入自体が目的になっていたり、データサイエンティストを育てる手段として考えていたりすることです。」(高橋氏)
そして高橋氏は最後にこう締めくくりました。
「これからの時代、データを活用した経営は必須です。そしてスピード感をもって効果的にそれを進めていく必要があるでしょう。それには、様々なソフトウェアの導入も取り入れた、データドリブンな経営に変えていくことが重要です。AIというのが予測や分類をするといった部分であれば、その前後に発生する業務も沢山あります。AIはそのすべてを担ってくれるものではありませんが、AIと今ある様々なデジタルテクノロジーを組み合わせることで、企業の持つデータの価値を向上させ、ビジネスをより豊かなものへと変えていくことができます。業務の全体像を捉え、AIの本質をわかっていただいた上で、今後実際の皆様の業務の中でAIを活用していけるのではないかと思っております。」
データ分析ちゃんとできていますか?
SCSK株式会社
奥谷氏
前段の高橋氏の話によりデータ活用の必要性を十分に理解したものの、
現状何も取り組めていない真っ新な状態の中、どのようなプロセスでそれを進めたらよいのでしょう。
次に、その疑問に対しSCSKの奥谷氏よりAI活用するためにまず必要なデータ分析について話を聞くことができました。
AI×BIで実現する付加価値
「AI活用のためにはデータ分析がとても重要になってきます。 データ分析を全く行っていない状態から、いきなりAI活用というのはなかなかうまくいきません。データ活用のステップとして、まずは可視化による現状の把握が必要です。そしてそれはBIツールによって実現することができます。」(奥谷氏)
奥谷氏は、せっかくデータ活用をスピード感をもって効果的に進めようとしても、肝心のデータが使えるものになっていなければAI活用は難しく、そもそもAIを業務に組み込むかどうかの判断もできないと言います。そこでAI活用における3つの失敗例と、BIツールを利用したその課題についての解決方法を4つのポイントで説明していただきました。
AI活用に対する過度な期待
「AI活用における失敗例の一つ目は、すべての商品や資材をAI活用のターゲットとして設定してしまうというものです。例え、AIをせっかく導入するのだから自社で持っている全商品3000種類すべてを計測しよう。というパターンです。こうなると作業費用がかさみ、プロジェクトが終わらないばかりか、本場業務に活用するまでに膨大な時間がかかってしまいます。」
「2つ目の失敗例はAIの予測精度に過度な期待があり、導入が進まないパターンです。そもそも人による見込み予測の精度は
60%程です。仮にAIで80%の精度が出れば20%も改善が見込めるのです。ですが現状把握ができていなければAIによる効果、ROIを見極められません。」
「3つ目の失敗例ですがAIを業務に組み込むかの判断基準となるKPIが決まっていないというパターンです。KPIが決まっていないので、現場もステークホルダーも、誰も導入や継続利用するかどうかの判断を付けることができません。」(奥谷氏)
BIを利用した事前分析の重要性とは
AI活用の失敗を成功へ。ではそのポイントについての話を伺います。
「AI活用を成功させるためにはBIツールを活用したデータ分析が必須です。その分析のポイントは大きく4つあります。」
※以下図①~④参照
「1つ目が予測対象のスコープを決める、そして2つ目がトレンドが読みやすい対象を把握する、3つ目が予測モデル監視する。最後4つ目がKPIを可視化するというものです。このポイントをしっかり押さえて頂くことで、AI活用を成功に導けるでしょう」(奥谷氏)
AI導入プロセスにおける分析ポイント
導入コンサルティング
①予測対象
スコープ分析
BIツール利用
②対象の
トレンド分析
BIツール利用
※上記にイメージにおいて
SCSKで導入コンサルティング実施
AI、RPA、BIに関してはすべてSCSK取り扱いソリューションで実現可能
③予測モデルの
監視分析
④KPIの可視化
BIツール利用
「分析ポイントを実際の食品メーカーさんの事例で見ていきましょう。最初に1つ目の予測対象スコープ分析ですが、まず商品の出荷数をBIツールで分析します。すると全体の50%にも及ぶ出荷数をトップ6商品で締めているというのが一目瞭然になります。BIツールの可視化によりこの6商品をAIの予測対象にするという判断を結果や実績を基にすぐ出すことができるだけでなく、社内のステークホルダーなど関係者の納得感が得やすくなり、AIのプロジェクトをスムーズに進めることができるでしょう。」(奥谷氏)
「次に2つ目の対象のトレンド分析ですが、時系列で商品毎の出荷数を可視化しております。下の図にありますように、定期的にトレンドになる商品は、AIの予測精度が高くなることが期待できます。逆に、テレビで取り上げられた、SNSでバズったなどの理由で急激な出荷量の増加があった。そのような商品の場合は予測がしにくくなります。この分析結果があれば、AIによる予測精度が高くなる商品を見誤ることなく選択することが可能になります。」(奥谷氏)
トレンドが読みやすい商品
トレンドが読みにくい商品
?
「3つ目の対象のトレンド分析ですが、AIを導入後、AIの予測精度と既存の人による予測実績、さらに実際の実績を可視化できるようになっています。下の左の図はゲージチャートというのもで、予測モデルごとの精度を可視化することで、どの予測モデルが一番成果が出ているのか一目でわかるようになっています。また、AI予測モデルは外部環境の変化により、経過日数が増えるとモデルが劣化するので、それをダッシュボードで監視することにも利用できます。」(奥谷氏)
「また、予測モデルの数が多くなった際には、ゲージチャートではなく以下の散布図が便利です。縦軸がモデルの経過日数、横軸がモデルの精度です。左上のエリアに経過日数が経っていて、モデルの精度も低くなってきているものがマッピングされており、ここを確認することでリモデルをするという検討の必要がある対象をすぐ特定できます。」(奥谷氏)
「最後4つ目のKPIの可視化ですが、これまで見てきた食品の出荷予測の事例ですと、例えば食品の廃棄率の削減量とそれに伴う削減コストを主なKPIとし、さらにそこにAI運用費用を含め比較検討していくことで、AI導入におけるROIを確認し、継続利用をするかどうかの判断に使って頂けます。」(奥谷氏)
AI活用とBIによるデータ分析が非常に密接であることが分かった今、この両方を融合させれば、様々なビジネスシーンにおいて期待以上の相乗効果が得られることでしょう。
さらなる相乗効果の実現のために
セミナー最後には「AIシステム大解剖! AI ×BI×EAIでプロアクティブなシステム構築」と題し、データ連携ツール、EAIにも触れたデモが行われました。
連携したいデータ項目を専用画面上で線を引いてノンコーディングで開発可能というEAI。こちらを使うことで、先にふれたAI×BIがさらに快適に利用できるようになるといいます。
「EAIツールで連携されてきたデータ、もしくはEAIツールがキックして動かしたAIの予測結果で得たものがデータウェアハウスに蓄積されて、最後にBIの方で確認ができるといったような仕組みになります。」
普段認識されることの少ないバックエンドの構成ですが、このような連携が上手くなされてこそ、「実績+未来の予測」の安定した運用を実現することが可能になるといいます。
デモで締めくくられたAI活用法セミナー。これまで未着手だったビジネス領域においてもスピード感を持って変革を必要とする時期に来ていると感じました。今後、様々なツールの使い分けや活用がビジネス成功への明暗を分けるといっても過言ではないでしょう。